About静嘉堂について
館長メッセージ
静嘉堂文庫美術館のおよそ6,500件の美術品は、三菱第二代社長岩﨑彌之助とその息子小彌太によって、明治初期から昭和20年までの間に蒐集されました。
当時丸の内周辺には三菱の赤煉瓦造りの洋風建築が建ち並びましたが、彌之助はこうしたオフィス街にこそ美術館のような施設が必要だと考え、ジョサイア・コンドルに設計図を依頼しました。現在に伝えられた図面によると、彫刻・絵画・版画・写真の展示室の他、図書室、レクチャーホール、学芸員室などを備える本格的な美術館施設でした。残念ながら、この美術館は完成することはありませんでしたが、オフィス街に美術館をという彌之助の意志を受け継ぎ、2022年10月に、静嘉堂文庫美術館は丸の内・明治生命館1階にギャラリーを設けました。
彌之助は一方で、同時代作家への支援も行い、明治28年の第四回内国勧業博覧会では妙技二等賞を受賞した野口幽谷や今尾景年の屏風のみならず、やや前衛的で批判を浴び、選外となった橋本雅邦や鈴木松年の屏風も購入しています。さらに腰巻事件として世間を騒がせた黒田清輝の「裸体婦人像」も購入して、高輪邸のビリヤードルームに飾りました。
このように同時代美術の前衛的な作品にも目配りした彌之助の姿勢を、この丸の内で如何に伝えてゆくかが、これからの静嘉堂文庫美術館の使命であると考えます。
オフィス街で美術を如何に伝え広めてゆくか。同時代の現代美術と如何に関わってゆくかについて、深く考えながら、これからの美術館活動をすすめてゆきたいと思います。